ストライキングを理解する
ストライキングとはガラスの温度を硬化点以上、軟化点以下に維持した時に起る色の変化を意味します。
ボロガラスの一部の色では明瞭で安定した色をだすためには経験と知識が必要です。
ストライクの仕方やフレームセッティングはガラスに含まれる発色剤によって異なるため初心者にとって”ストライキング”を理解することは作品制作の最初の一歩と言えるでしょう。
この”ストライキング”についてグラスアルケミーのウェブサイトでは以下ように説明されています。
(グラスアルケミーHPの内容を翻訳して掲載しています。)
とても難しい内容なので大まかな概要を理解できれば十分です。
ストライキングとは
透明ルビー(コパーで着色されたもの)やシルバーで着色された色などのいくつかのガラスの成分は、ある特定の方法で熱した時や冷ましたときに色を変化させます。
しかしながら色の変化を引き起こす要因は必ずしも同じではありません。"ストライキング"という専門用語はガラスの中で熱処理によっておこる全ての色の変化を示すようになり始めていますが、この専門用語がそのまま受け入れられる前に、コパーとシルバーは全く異なった理由で変化するということを理解するべきでしょう。
ルビーガラスでは、コパーは色を変化させるための成分であり、酸化コパー(Cu2O)が溶けたバッチ(バッチとは1回に生産される量の原材料を意味します)に加えられています。ガラスが溶けている時バッチの中でコパーの分子と、酸素分子はばらばらに離れて他の分子と結合します。
ルビーカラーの魔法はガラスの徐冷点でこの化学結合を壊し、膠質(粒子が、液体・気体・固体などの媒体中に分散している状態。煙・牛乳などの類)のコパー分子と酸化コパー(ルビーカラーを形成するのはコパーなのか酸化コパーなのかはいくつかの議論がある。しかし2つのコンビネーションが最も良い効果を生む)を形成するために自由になることです。このタイプの分子再構成を経るガラスは伝統的に"ストライキング"カラーと言われてきました。
他のタイプの色の変化は結晶の増加によるものです。シルバーストライクシリーズや、アマゾンシリーズ、カメレオンシリーズのような色は、ガラスの内部で数百万の小さなシルバーの分子が存在しています。それらの小さなシルバーの分子はガラスの内部のあちこちに均一に配置している時は黄色の波長を反射します。
コパーとシルバーのストライクの基本的な違いはどのようにそれらの分子が熱に反応するかです。コパーの粒子は自由になり赤の光の波長を反射する個々のコパーもしくは酸化コパーを形成します。よりたくさんの赤の粒子があればルビーカラーはより暗くなります。しかしながらシルバーはガラスの分子から自分自身を切り離し、様々なサイズのシルバーの結晶を生み出す他の自由なシルバーの分子と結合します。
結晶の増加のプロセスは時間と温度の相関関係であり、シルバーが生むことのできる全色帯をコントロールすることができます。ガラスが高温にさらされるとシルバーの分子はガラス分子の配列から切り離され冷却の効果でガラスの配列の中に戻るまでガラスの内部を自由に動きます。
(注意:アマゾンシリーズやカメレオンシリーズのようなシルバーのみを含み、シルバーの分子が結晶を形成することを可能にし、それらが元の状態へと戻ることを妨げる核を持つガラスの中でおこる元のロッドカラーへの再移行している状態)
ガラスが冷めたとき全てのシルバーの分子がガラスの配列に戻るわけではありません。次に与える加熱によってそれらの"ホームレス"状態の小さなシルバーは核、もしくはより安定したシルバーの結晶が成長する場所として機能します。冷却と再加熱のプロセスはより大きな結晶へと成長するのを可能にします。ガラスによって反射された色は、イエロー(小さな結晶)パープル、ブルー、グリーン(大きな結晶)などの様々な大きさの結晶の働きによって見ることができます。
どうでしょうか?難しい文章ですね。ガラスを製造してる人でないとわからないような文章です。
ここからは図を使ってもう少しわかりやすく解説していきます。
まずストライキングの解説をする前にそもそもなぜガラスは透明なのかって気になりませんか?
ガラスが透明に見えるのには分子構造に理由があり、このガラスの分子構造を理解するとストライキングの仕組みもおのずと見えてきます。なのでまずガラスが透明に見える理由を説明したいと思います。
なぜガラスは透明なのか
多くの個体は結晶構造を持っています。

不透明の個体の多くは結晶構造を持っています。

大きなな結晶は小さな結晶同士がたくさんくっついてできています。この境目を「粒界」といいます。図の青の部分が「粒界」です。

この「粒界」が光を反射してしまうため透明ではなくなってしまいます。

一方ガラスは結晶ではなく粒界も持たず不均一な結晶構造をいていて構造的には液体と同じです。結晶ではなく粒界も持たないということは光が反射しないため透明に見えます。これを「非晶質」といいます。

ガラスは結晶体をもたない非晶質の物体、つまり水がそのまま個体となったようなものと考えて下さい。
水は液体の時分子がばらばらで自由に動き回っていますが冷えて氷になって個体になると分子がキチンと配列し結晶をつくりますよね。ガラスの場合は冷えて個体になっても分子の状態は水と同じということです。
さてここからはストライキングの話に戻ります。

発色剤としてシルバーを含む色は、ガラスの内部で数百万の小さなシルバーの分子が存在しています。それらの小さなシルバーの分子はガラスの内部のあちこちに均一に配置している時は黄色の波長を反射します。
トリプルパッションを加熱すると透明な黄色になるのが一つの例です。

ガラスが高温にさらされるとシルバーの分子はガラス分子の配列から切り離され冷却の効果でガラスの配列の中に戻るまでガラスの内部を自由に動きます。

しかしガラスが冷めたとき全てのシルバーの分子がガラスの配列に戻るわけではありません。次に与える加熱によってそれらの"ホームレス"状態の小さなシルバーはシルバーの結晶が成長する場所(核)として機能します。赤で囲ってあるのがガラスの配列に戻らなかったシルバーの分子。これが核になる。

シルバーの核は冷却とストライキングのプロセスによってより大きな結晶へと成長します。ガラスによって反射される色は、イエロー(小さな結晶)パープル、ブルー、グリーン(大きな結晶)などのように結晶の大きさによって異なるためトリプルパッションのように様々な色が見えます。
図ではシルバーの核を中心にシルバーの分子が結合し結晶を作っている。このとき、ゆっくりとシルバーの結晶を成長させることで様々な大きさの結晶が形成される。結晶は「粒界」を持っているため光を反射するのだが結晶の大きさによって反射される光の波長は異なるため様々な色が見える。

